生命保険契約の落とし穴
相続あんしん相談室の弁護士小池智康です。
今回は、生命保険の受取人に関する問題についてです。
生命保険の受取人が被保険者より先に亡くなってしまい、その後、受取人が変更されないまま、被保険者がお亡くなりになるというケースがあります。
この場合、誰が生命保険金の受取人になるのか、というのが今回の問題です。
この点については、保険法46条(旧商法672条2項)に規定があり、受取人の法定相続人が受取人になるということになっています。
保険金の受取人になる法定相続人に順次相続人が含まれるのか、保険金を受領する割合はどうなるのか、という点については、最高裁判所の判断が次のような判断をしました(最判平成5年・9月7日、民集47巻7号4740頁)。
①受取人になる法定相続人には、順次相続人も含む
②保険金を受領する割合は平等(法定相続分ではない)
この最高裁の判断により、実務的には、この判例に従って約款が改定され、あるいは、上記判例にしたがった処理がなされており、論点としては解決済みの感があります。
しかしながら、保険金請求の現場では、上記判例の処理にしたがった結果、保険金の請求をすること自体が困難になるケースが生じています。
子供がいない夫婦の夫Aが妻Bを受取人として保険契約を締結していたケースを例にご説明します。
【事実関係】
・夫Aと妻Bはそれぞれ、4人兄弟であり、その兄弟は全員健在である。
・夫A妻Bともに両親は亡くなっている。
・妻Bは平成23年1月1日に死亡した。
・夫Aは平成24年1月1日に死亡した。
・夫Aの死亡時点での保険契約上の受取人は妻Bとされていた。
この事例に上記判例の考えを当てはめると、保険金の受取人は次のとおりになります。
①妻Bの兄弟3人
→受取人の法定相続人だから。
②夫Aの兄弟3人
→受取人の順次相続人だから。妻Bが亡くなったことにより、その法定相続人である夫Aと妻Bの兄弟が保険金の受取人になり、夫Aの死亡により、その相続人である夫Aの兄弟が順次相続人として保険金の受取人になります。
保険金の受取人は、このように理屈で確定できるのですが、実際に保険金を請求するのが大変です。
保険金の受取人が誰になるかという一般論は、保険会社の担当者が教えてくれますが、どこの誰が受取人とまでは教えてくれません。そのため、上記の事例であれば、保険金を請求する為に、夫Aの兄弟と妻Bの兄弟が連絡を取り合うことになります。
次に、保険会社から被相続人と受取人の戸籍謄本を集めるように言われます。
更に、保険金を請求する書類に原則、全員が署名・押印し、印鑑証明書を添付します。
やっと、保険金を受領することになっても、保険金は、代表者宛に振り込まれるので、代表者の方は、他の受取人に保険金を送金しなければなりません。
以上の作業をなれない方が仕事などの片手間で行うのはかなり大変です。その結果、保険金請求手続の引き受け手がいないため請求せずに放置していたり、着手したものの頓挫しているというケースが多々あります。
このような場合は、当事者で無理をせずに専門家に手続を依頼することが効率的です。
相続あんしん相談室では保険金請求手続(受取人の調査→必要書類の準備→保険金請求→各受取人への保険金の分配)も承っておりますのでお気軽にご相談ください。