兄弟間の遺産分割調停と祭祀承継調停を弁護士が代理した事例
記載の解決事例は旧法事例となります。
事案の概要
・長男である被相続人の兄弟と甥が相続人
・三女と四女が申立人として遺産分割調停と祭祀承継者指定調停を申し立てた
・被相続人は一人暮らしだったため遺産の内容が不明
事案の問題点
・遺産分割調停の申立時点では、不動産だけが遺産とされたが、被相続人の生活状況に照らし、預貯金の存在が疑われました。
・相続人である甥が調停への関与を拒絶し、裁判所から送達された書類を裁判所に返送するなど頑な態度を示していました。
対応内容
・調停期日間に被相続人の自宅を関係者の立ち会いのもと、代理人弁護士が捜索し、遺産に関する情報を収集し、これに基づき預金調査を行いました。
・調停への関与を拒絶していた甥については、代理人弁護士が交渉し、依頼者に相続分を譲渡してもらい、調停手続から外し、その他の相続人で遺産分割協議を成立させました。なお、非常に希なケースと思われますが、甥は相続分譲渡の添付資料である印鑑証明書を提出しなかったため、代わりに裁判所調査官が甥と面接し、相続分譲渡に関する意思確認を行いました。
・不動産については、当事者間で最低売却価格と売却期間を設定し、申立人側と依頼者側の双方で不動産仲介業者を選任して売却手続を行いました。
・不動産の売却については、契約締結、代金等の決済に代理人弁護士が立ち会い、売買代金を各依頼者に分配する作業を行いました。
・売却した不動産に関しては、譲渡所得税の申告が必要であったことことから、代理人弁護士が税理士を手配し、納税まで代行いたしました。
弁護士小池のコメント
本件は、遺産の分割自体は容易な部類に入る事案でしたが、手続に非協力的な甥にどのように対処するかが大きな問題でした。そこで、代理人弁護士から甥に連絡を取り、相続分の譲渡を受けるという方法で遺産分割調停に関与しないという方法を提案しました。
不動産の売却については、相続人が5名いる事案のため、事務連絡・必要書類の確保に非常に手間がかかりました。相続案の中には、揉めていないのに話が進まないというケースがありますが、このようなケースのうち多くは、事務作業の負担が重いことから手続がすすまないことが原因となっています。本件のように相続人が多い事案の不動産売却を代理すると、事務作業の負担で話がすすまないというのも頷けます。
なお、祭祀承継者指定調停は、審判に移行した後、長女(依頼者)と被相続人の生前の交流等が評価されて、調停に代わる審判により、長女が祭祀承継者に指定されました。