弁護士の交渉により早期解決した事例:不動産の利用状況に応じて代償分割及び換価分割を行い、預貯金の解約も代理した事例

記載の解決事例は旧法事例となります。

事案の概要

相続関係

本件の被相続人は相談者の母親でした。被相続人には長男と長女がいたことからこの二人が相続人になるという事案でした。

 

 

遺産の内容

本件の遺産は、自宅(土地建物、以下「本件自宅」といいます)、長女の自宅(土地建物、以下「長女自宅」といいます)、預貯金及び保険契約(被相続人が保険契約者、相続人らが被保険者)でした。

 

 

 

遺言の有無

遺言はありませんでした。

事案の問題点

市街化調整区域の自宅の処分

本件自宅は、もともと、被相続人の夫の所有でしたが、同人が亡くなった後、妻である被相続人2分の1、長男・長女が各4分の1取得し、共有になっていました。そのため、被相続人の遺産に含まれるのは、共有持分2分の1という状況でした。

また、本件自宅は、市街化調整区域に存在しており、登記地目も「畑」のままになっていたことから、売却処分するには農地転用を行う必要がありました。 

本件自宅は、長男・長女ともに積極的に利用する意図はありませんでしたが、共有として売却するのは手続が煩雑になること、他方、一方の当事者が取得するとその評価額が争点になってしまうという問題があり、これに農地転用の問題もからみ、取扱いを難しくしていました。※図3

長女の自宅として利用されている長女自宅の処分

長女自宅も、本件自宅同様、もともと被相続人の夫が所有していましたが、同人が亡くなったことから、妻である被相続人2分の1、長男・長女が各4分の1取得し、共有になっていました。※図4

長女自宅については、長女が継続して居住することを希望しており、長男もこれを受け入れていたことから、長女が代償取得することは共通認識でしたが、その評価額が問題となりました。また、本件自宅は、今後も長女が居住することから、長男が有している持分の取扱いも併せて問題になりました。

相続税の申告

本件は、預貯金額をみるだけでも相続税申告が必要なことが明らかな事案でしたが、長男・長女間では、一切のコミュニケーションが取れない状況であったため、正確な遺産の把握が難しい状況でした。※図5

貸金庫の解約

被相続人は、生前、金融機関の貸金庫を利用しており、相続開始時点でも貸金庫契約が継続していました。一般的に金融機関の貸金庫の開扉は、相続人全員の立ち合いか委任状の提示を求められることから、貸金庫の内容確認と解約をどのように行うかという問題がありました。

預貯金の解約

本件では、遺産に含まれる預貯金口座が多数存在し、最終的に長男が取得した預貯金口座は金融機関単位で分類しても5金融機関に及びました。預貯金の相続手続・解約は、単純な事務作業ですが、これが5つ重なると、平日に仕事をしている方にとっては相当の重荷になります。そのため、預貯金の相続手続・解約への対応も問題となりました。

対応内容

市街化調整区域の本件自宅の処分

本件自宅については、当初、長男が相続し、長女の持分(4分の1)は長男が買い取ったうえで、その後、まとめて長男が売却するという方法も検討しましたが、その際、不動産の持分をいくらに評価するかということで紛糾することは避けるべきと判断し、長男長女がそれぞれ4分の1相続した後、もともとの持分と併せて共同で売却することとしました。

共同売却は、売買契約→相続登記→境界確定→代金決済を共同で行うため、事務連絡や必要書類の授受はかなりの負担ですが、双方に代理人弁護士がついていたため、確実に処理できると判断し、共同売却を選択しました。※図6-1及び2、図7

農地転用についても、代理人弁護士が、境界確定と併せて、土地家屋調査士に依頼し滞りなく手続を終えました。

長女の自宅として利用されている不動産の処分

長女自宅に関しては、長女が取得するため、評価の問題は避けて通れませんでしたが、他方で、評価額の確定にコストをかけるまでの物件でもありませんでした。そこで、相続人代理人弁護士の双方から不動産の査定書を提示し、近隣の公示地価を加味しながら協議を行い、最終的に評価額を合意により確定しました。

この評価を前提に、遺産に含まれる持分は、長女が代償分割で取得し、長男が有していた持分(4分の1)は長女に売却する処理をしました。※図8 

相続税の申告

相続税申告は、所定の期間に行う必要があるため、双方代理人弁護士で互いに遺産の情報を開示し、遺産の範囲を確定した上で、同じ税理士に相続税申告を依頼しました。

貸金庫の解約

貸金庫の開扉・解約は、相続人全員の立ち合いか委任状を要求されることから、原則どおり、長男・長女の代理人弁護士が立ち会って対応しました。

預貯金の解約

預貯金の解約については、金融機関の数からいって、仕事をしながら対応するのは難しいことから、当職が代理人弁護士として、各金融機関の窓口に赴いて相続手続・解約を行いました。解約した預貯金は、代理人弁護士の業務用預かり口座でお預かりすることができますので、いちいち入金確認するなどの手間もかかりません。お預かりした預貯金は、最終清算後、依頼者である長男にお返ししました。※図9

弁護士小池のコメント

本件は不動産が共有になっているため、遺産分割と共有不動産の処理を同時に行う必要がある案件でした。

共有不動産の処理に関しては、共同して売却するという方針はさだまったものの、手続が煩雑すぎて頓挫することが珍しくありません。この点で、本件は各相続人の代理人弁護士間で協力しながら、共同売却という解決を実現した点で参考になると思われます。

また、相続では、紛争化している場合でも、相続税の申告や貸金庫の解約など様々な場面で相続人弁護士同士で協力する必要が生じます。このような場合、紛争当事者である相続人同士では円滑にすすまない手続も代理人弁護士を介すことで、スムーズな対処が可能になります。

最後に、預貯金の解約ですが、預貯金が複数ある場合は、事務負担は相当な量になりますので、無理せず弁護士にまかせるのが良いかと思います。預貯金の解約は弁護士が取扱う紛争案件ではない等の理由で対応しないという事務所もあるようですが、弊所では相続手続・解約→費用精算→相続人への分配という作業までフォローしております。

本件は共有不動産を相続した場合の処理について、特に参考になると思われることからご紹介いたします。

 

 

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