相続人所有の建物が存在する土地(底地)について代償分割をした事例

記載の解決事例は旧法事例となります。

1.事案の概要

(1)相続人等

被相続人の子供5名

(2)遺産

相続人である長男所有の建物が存在する土地(80坪)

(3)被相続人の生活状況

被相続人は、配偶者が亡くなったのちは一人暮らしをしており、平成16年頃、施設に入所し、平成23年に亡くなりました。

(4)遺産分割協議の経過

相続開始後、三女から長男に対し、遺産の土地を長男が取得することと引き換えに、一定の金銭を支払う方向での遺産分割を打診しましたが、長男は金銭的余裕がない等の理由で支払いを拒絶しました。
三女は、海外に住んでいたため協議が進まず、当職が三女から遺産分割協議を受任しました。

2.事案の問題点

(1)相続人が多数のため手続が複雑になること

本件では、相続人が5名と比較的相続人が多い部類の事案である上、長男と三女以外は遺産分割に無関心であり、各自が個別に対応している状態でした。そのため、このまま遺産分割調停を申し立てた場合、一回の期日に、5人の相続人がバラバラに対応して、調停の進行が遅延する恐れがありました。

(2)不動産の評価額

本件は、遺産が土地1筆と非常にシンプルでしたが、この土地上に長男所有の建物が存在したため、現状としては、底地という状態になります。そのため、この点をどう評価するかが争点となりました。

3.対応内容

(1)相続人が多数である点の対応

遺産分割協議に無関心な相続人がいる場合の対処法として、当該相続人から相続分の譲渡を受けて、遺産分割のと当事者から抜けてもらうという方法があります。本件でも三女が相続分の譲渡を検討しましたが、長男以外の相続人(三女を除く)は、長男が遺産を取得することで構わないとの意向だったことから、三女が相続分を譲りうけることは難しいと判断しました。
そこで、調停申し立てに先立ち、長男以外の他の相続人に通知を出し、三女において遺産分割調停を申し立てること、この場合関心の有無にかかわらず遺産分割調停の当事者になってしまうのが速やかに相続分を長男に譲渡すれば調停手続から脱退できることを伝えておきました。
その後、第一回調停期日が開かれ、その席上で長男以外の相続人から相続分を長男に譲渡することとされ、当事者が長男と三女に絞りこまれました。

(2)不動産の評価額

本件の遺産である土地については長男から、いわゆる底地であり売却可能性が事実上存在しないことから、極めて低額の評価しかできないことを前提に代償金100万円の提示がありました。
これに対し、当方(三女)からは、土地上の建物は長男所有であり、その敷地権(使用貸借)は特別受益にあたること、この点を踏まえ、土地は更地評価をすることが妥当との反論をしました。
土地の評価については、更地を基礎とするとの当方の主張が調停委員会にも概ね受け入れられたため、更地ベースで評価額の協議をすすめ、最終的に代償金380万円で合意し、支払いを受けました。

4.弁護士小池のコメント

親の土地上に建物を建築して無償で土地を利用しているという事例は相続では珍しくありません。このような場合は、当該土地を更地で評価した上で、建物所有者の相続人が取得し、他の相続人は、当該土地以外の遺産を取得するとの方向で調整するのが一般的です。
本件の場合は、遺産が土地しか存在せず他の遺産で調整ができない上、長男の代償金支払い能力が必ずしも十分でなかったことから協議が難航しました。このようなケースでは、換価分割や共有分割→共有物分割も見据えて調停にのぞみ、相手方に資金確保を強く動機付けることが重要です。

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