多数の相続人の不毛な意見を遺産分割調停・審判を利用して整理し、不動産を換価分割した事例
解決事例ダイジェスト
☑多数の相続人の不毛な意見を調停・審判で整理
☑調停の初期段階で審判を見据えて手続を進行
☑不動産の処分も任意売却ではなく競売を選択
事案の概要
相続関係
- 被相続人:父
- 相続人:長男、長女、二男、二女
遺産の内容
- 実家不動産(土地建物)
- 預貯金2口座
遺言の有無
遺言はありませんでした。
その他(代理人の選任状況)
長男と長女はそれぞれ弁護士を代理人に選任したものの、二男、二女は本人が交渉・調停に対応している状況でした。
事案の問題点と対応内容
多種多様な議論の整理
本件では相続人4名がそれぞれ個別に交渉をし、それぞれが法律上は意味がない独自の事情をも含めて主張していたため、かなり複雑な様相を呈していました。しかも、調停では一つの論点を解決するにも、4人の相続人(又は代理人)に個別に意見確認をすることになるため、些細な論点を解決するにも1期日かかるような状態でした。
そこで、当職において、期日前に、次回期日で協議すべき事項や各相続人の意見などを整理した書面を提出し、期日当日の議論が円滑に進むように準備をしました。また、他の相続人が遺産分割との関係では無意味な過去の事情等を主張している点については、積極的に協議対象から除外するように申し入れるなど、協議事項を絞り込む方向で調停を進めました。
不動産の処理方針
相続人間では不動産を売却して金銭で分割するという方針では一致していたのですが、売却の話し合いをしようとすると過去の事情を絡めた条件闘争になってしまうことから、本件では早い段階で任意売却はあきらめました。
各種論点の整理がつき、裁判所から分割方法の意見聴取がされた時点で、明確に競売による換価分割以外は応じないとの意向を明示することにより、不毛な任意売却の議論に時間を費やすことを回避できました。
最終的な解決
最終的には、預貯金は現物分割(一部代償金)、不動産は競売による換価分割の審判がなされて本件は解決しました。
弁護士小池のコメント
本件は遺産の内容という観点からすると非常に簡単な事件ですが、4名の相続人がそれぞれの意見で協議しているために協議が進まないという『相続人』によって解決が難しくなっているタイプの事件でした。
このような事件では、遺産分割に必要な事項だけに絞り込んで協議を行い、不必要な事項は協議から除外する(応じない)という姿勢が重要になります。この主事件では『話せばわかる』とか『家族の問題だから話し合いで解決した方が良い』といった発想は、かえって紛争を複雑化させ、解決を遠のかせてしまいます。
本件は、話し合いが遺産分割の解決にとって有害になる事例として参考になると思われることからご紹介いたします。