多数の相続人が遠方に散在している相続の遺産整理をした事例
記載の解決事例は旧法事例となります。
1.解決事例ダイジェスト
《業務内容》 相続手続・遺産整理
☑ 遠方に散在する相続人の意見を取りまとめる。
☑ 売却困難な不動産の売却を実現
2.事案の概要
(1)相続関係
本件は、二つの相続が順次発生した事案でした。
ア 第1相続
被相続人:A
相続人:Aの妻(B)、Aの兄弟3名
イ 第2相続
被相続人:B
相続人:Bの兄弟2名
(2)遺産の内容
第1相続の遺産は、Aの自宅不動産のみ、第2相続の遺産は預貯金とAの相続に関する相続分(自宅不動産の持分4分の3)でした。
(3)遺言の有無
遺言はありませんでした。
(4)その他
Bの相続に関しては、金融機関に相続手続の代行を依頼し、預貯金の相続手続(解約)が行われていました。
3.事案の問題点と対応内容
(1)兄弟姉妹の相続が続いたことにより相続人間の面識が全くない状況になったこと
本件は、子供がいない夫婦のAとBが、遺産分割未了の状態で順次亡くなってしまったことから、最終的にAの兄弟とBの兄弟が相続人として遺産分割協議をすることになりました。この様な遠縁の相続になるとお互い面識がないため、当事者間に信頼関係が形成されておらず、あたり前のことをすすめるにも時間がかかります。また、些細な行き違いや説明の誤りが原因で相続手続が進まなくなってしまうこともあります。
そこで、本件では、手続の整理と相続人への説明を含めた、相続手続・遺産整理を弁護士が行うことになりました。
(2)相続人が多数で全国各地に散在する状況だったこと
第1相続の遺産である不動産は埼玉県にありましたが、相続人は埼玉、福島、北海道に散在しており、上記のとおり相続人間で面識がないため、手続を慎重に進める必要がありました。
そこで、弊所では、現在の相続の状況、問題点、今後の見通しを文書にして随時、全相続人に送付して、同じ情報を共有するようにして、手続を進めました。
(3)第1相続の遺産である土地が私道持分を有していなかったこと
第1相続の遺産である土地は、公道から開発道路(私道)が引き込まれており、その開発道路に面した宅地でした。通常、このような場合は、開発道路に面した宅地所有者全員で私道を共有し、道路として利用することができますが、Aは私道の持分を所有していませんでした。
そこで、売り主(建売業者)に事情を確認しようと、登記簿を取り寄せたところ、既に破産していたことが判明しました。このような経過で、Aの遺産である土地は接道要件を満たさないため再建築ができない物件となり、売却が難しい物件状況となりました。
そうは言っても、相続人のうちだれも不動産の取得利用を望んでおらず、管理費用もかかるため早期の売却を望んでいたことから、破産管財物件の売却で実績のある不動産仲介業社に依頼して、なんとか売却に漕ぎつけました。
4.弁護士小池のコメント
本件は、相続人多数で全国に散在しているという点で、揉めないのに相続手続がすすまない典型的な事案でした。この様な事案では、手続を的確にリードするものがいるか否かが重要です。リーダーがいない場合、手続は進みませんので専門家への依頼が解決の早道になります。
不動産が接道要件を満たさないという点は、本件特有の問題でした。近年は不動産を相続しても管理コストがかかるので、売却(処分したい)という案件も多く、不動産の条件によっては、相続はメリットを受けるものではなく、不要な資産を処分する負担を強いられるものになります。本件も後者に近い案件でしたが、仲介業者の尽力もあり、不動産を処分して、遺産整理を終えることができました。
本件の依頼者は、最初、Bの相続手続の代行を金融機関に依頼したころ、不動産の処分は断られ、結局、預貯金の解約しか代行してもらえず、不動産を何とか処分するため、弊所にご相談され、金融機関と弊所それぞれに費用を支払うこととなってしまいました。金融機関の相続手続は、担当者の対応がよくトレーニングされており、迅速ですが、定型的な業務を想定していますので、イレギュラーな案件はミスマッチになりやすいという難点があります。
本件は遺産整理の典型的な業務を含むと共に、遺産整理・相続手続を依頼する際の参考になると思われますのでご紹介いたします。
以 上