遺産分割協議に一切応じない相続人に対して遺産分割調停を申立て、アパートローンの処理も視野にいれた調停に代わる審判で解決した事例

1.解決事例ダイジェスト

☑ 遺産分割協議に応じない相続人に対して淡々と裁判を進めて遺産分割を解決

☑ アパートローンを考慮した解決を実現

☑ 銀行関係の手続もフォロー

 

2.事案の概要

相続関係

 ①被相続人:依頼者の夫

 ②相続人:配偶者(依頼者)、長男、二男

遺産の内容

 自宅土地建物、アパート1棟、預貯金約800万円、アパートローン約1600万円

遺言の有無

 遺言はありませんでした。

3.事案の問題点と対応内容

(1)二男と全く連絡が取れない状況になってしまったこと

本件は、四十九日過ぎに行った遺産分割協議では、二男は遺産はいらないという意思を示していましたが、些細なやり取りで関係が悪化し、まったく連絡がとれなくなってしまいました。そのため、遺産分割協議書等の作成ができず、弊所に対応を依頼することになりました。

また、弊所が受任後に送った文書は差仕置き期間満了で返送され、裁判所が送った書類(調停に代わる審判)も受領しないなど、一貫して連絡が取れない状態が続きました。

そこで、弊所は、裁判所に随時、二男との連絡がとれない状況を報告しつつ、最終的には、二男の現住所で居住状況を調査し、管理会社にも確認をとった上で、付郵便送達という方法で審判書を送達してもらい、手続を完了させました。

(2)アパートローンの処理に二男が協力しないこと

本件の遺産であるアパートは、銀行からアパートローンの融資を受けて建築したという経緯があったため、相続財産にはアパートローンが負債として残っていました。一般的に、銀行等の金融機関はアパートを相続する相続人に対してアパートローンを承継することをもとめ、他の相続人の支払義務は免除しますが、そのためには、金融機関と相続人間で、ローンの取扱いに関する合意書を作成することが必要になります。

ところが、本件では二男と一切連絡が取れない状況であったためアパートローンの承継手続ができない状態になっていました。

遺産分割調停・審判では、相続債務の分割はできないため、最悪の事態としては、アパートローンの処理ができないことも想定されましたが、後述のとおり、アパートローンの支払義務を配偶者とする旨の調停に代わる審判を出してもらい、これを基に銀行と交渉を行い、配偶者がアパートローンを承継し、二男の債務免除については銀行と二男の合意書までは要求しないとの処理をすることとなりました。事案の特殊性を踏まえた例外的な処理となるため、一般化は難しいかもしれません。

(3)代償分割の際の代償金を準備することが難しい状況だったこと

本件の遺産に含まれるアパートの賃料は、年金と併せて配偶者の生活原資になっており、配偶者としては是非とも取得したい物件でした。

もっとも、遺産には預貯金は少なく、配偶者自身もアパートを代償取得するほどの預貯金は持ち合わせていなかったため、代償金の支払原資を確保できない状況でした。

裁判外で遺産分割協議をする場合は、アパートとアパートローンをまとめて配偶者が承継するなどの柔軟な処理ができますが、二男が出頭しない状況での遺産分割調停・審判では同様の処理ができません。他方で、配偶者の今後の生活を考慮すると、アパートを取得することが欠かせない点を強調して裁判所と協議を行い、最終的にアパートローンを配偶者が支払うという条件でアパートを配偶者が単独取得するとの調停に代わる審判を出してもらうことになりました。

4.弁護士小池のコメント

本件は①配偶者がアパートを単独で相続するということ、②二男の協力なしに銀行との間でアパートローンの承継手続を行うということが主要な問題でした。①については、上記のとおり配偶者がアパートローンの支払義務を負担するとの調停に代わる審判がなされましたが、債権者である銀行の関与がないため、理論的には併存的債務引受けという解釈になると思われます。そのため、②の銀行との関係で配偶者がアパートローンを承継する(二男を免責する)手続が必要になりました。

二男の合意なしに処理することは前例がないようでしたが、免責的債務引受の要件が改正されたことで、何とか解決に漕ぎつけました。

遺産分割は、基本的には相続に間の問題であり、協議が不調であれば調停・審判により解決が可能ですが、金融機関からの借り入れがある場合は、別途、対応が必要になります。

本件は金融機関対応が必要となる典型例であるとともに、相続人である二男の協力が全く得られないという捻りが加わった事案として類似事案の参考になるとおもわれます。

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