不当な主張に徹底的に反論した上で、不動産の利用状況に沿った鑑定評価を獲得して遺留分を回収した事案

1.解決事例ダイジェスト

☑ 成立見込がない調停は速やかに不成立として訴訟に移行

☑ 特別受益性を否定する主張には一切妥協せずに反論

☑ 複数の利用単位を想定して不動産鑑定を実施

 

2.事案の概要

相続関係

①被相続人:母

②相続人:長男、長女、二女、三女、養女(三女の長女)

遺産の内容

  • 土地3筆(いずれも共有持分1/2)
  • 建物1棟
  • 預貯金5口座

遺言の有無

全財産を三女に相続させるとの遺言がありました。

その他(特別受益)

被相続人は土地2筆(自宅の敷地)の共有持分1/2を三女に生前贈与していました。

3.事案の問題点と対応内容

(1)迅速な進行のための手続の整理

本件は、弊所が受任前に遺留分侵害額調停が申し立てられており、調停の途中から弊所が受任したという経緯がありました(申立人は長男及び長女、相手方は三女)。受任後に事件の検討を進めたところ、生前贈与の扱いに関する三女の主張、不動産評価の論点を解決するには調停は適切でないとの判断にいたりました。

そこで、受任後1回目の期日で調停継続の条件を提示し、三女側が拒絶したことから、この期日で調停を不成立とし、遺留分侵害額訴訟に手続を移行しました。

(2)生前贈与が特別受益にあたらないとの主張に対する反論

三女は、被相続人から自宅敷地の共有持分1/2を贈与されていたことは争いませんでしたが、この贈与は被相続人に対する療養看護等に報いる趣旨であること、共有持分は処分可能性が乏しいため実質的価値は低いとして、「生計の資本としての贈与(=特別受益)」にはあたらないと主張していました。

上記三女の主張は贈与の対象となった土地全体の評価額が1億円を超えるものであること等から、裁判所に受け入れられる可能性は殆どない主張と思われました。もっとも、このような主張をしておくことで、将来の和解協議の際に当方に妥協を迫るカードとして利用する意図が三女側にあるかもしれません。そこで、そのような妥協をしない姿勢を明確にするために三女の主張には徹底的に反論をしました。

本件は最終的に和解で解決しておりますが、裁判所が示した和解案でも三女の特別受益に関する主張は認められませんでした。

(3)不動産の利用状況を踏まえた適切な鑑定条件の設定

本件の遺産に含まれる不動産のうち、2筆は自宅の敷地として利用していましたが、三女が単独で所有する土地(A土地)も自宅の敷地として利用されている状態でした。不動産鑑定にあたっては、①自宅敷地の一部を構成する2筆を利用単位として不動産鑑定を行う方法、②上記2筆とA土地を一つの利用単位として不動産鑑定を行い、その評価額を面積割で2筆に振り分ける方法のいずれを採用するかで見解が分かれました。②の場合、マンション建設が可能となるため、土地の評価額がかなり増額することが見込まれました。

最終的には、①及び②の両方の鑑定を行い、いずれを採用するかは裁判所が判断することとなり、和解では②説が採用されました。

4.弁護士小池のコメント

本件は不動産鑑定に関する論点の重要性が8割~9割を占める案件でした。そこで、不動産の評価を議論する前提としての利用単位をどのように考えるかという問題意識を訴訟の早い段階で裁判所に共有してもらうため、図面で土地の位置関係・利用関係を説明するなど情報の解説を丁寧に行いました。

また、鑑定申請後は、意見書の提出・鑑定人との打合せ等で4か月程度の時間をかけて鑑定条件を詰める作業を行いました。結果的に有利な鑑定を得ることができたのは、鑑定条件を詰める際に妥協せずに協議を行ったことが大きいと思われます。

相続案件では、遺産の土地と相続人所有の土地が一体として利用されることも多くあります。本件はそのような事案の鑑定申請について参考になると思われるためご紹介いたします。

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