住所で特定された不動産を遺贈するとの遺言を当該住所にある土地及び建物の遺贈であると解釈した事例(最判平成13年3月13日)

最高裁の判断

『遺言の意思解釈に当たっては,遺言書の記載に照らし,遺言者の真意を合理的に探究すべきところ,本件遺言書には遺贈の目的について単に「不動産」と記載されているだけであって,本件土地を遺贈の目的から明示的に排除した記載とはなっていない。一方,本件遺言書に記載された「荒川区西尾久7丁目60番4号」は,富美雄の住所であって,同人が永年居住していた自宅の所在場所を表示する住居表示である。そして,本件土地の登記簿上の所在は「荒川区西尾久7丁目」,地番は「158番6」であり,本件建物の登記簿上の所在は「荒川区西尾久7丁目158番地6」,家屋番号は「158番6の1」であって,いずれも本件遺言書の記載とは一致しない。以上のことは記録上明らかである。

そうすると,本件遺言書の記載は,富美雄の住所地にある本件土地及び本件建物を一体として,その各共有持分を上告人に遺贈する旨の意思を表示していたものと解するのが相当であり,これを本件建物の共有持分のみの遺贈と限定して解するのは当を得ない。原審は,前記1(5)のように本件遺言書作成当時の事情を判示し,これを遺言の意思解釈の根拠としているが,以上に説示したように遺言書の記載自体から遺言者の意思が合理的に解釈し得る本件においては,遺言書に表われていない前記1(5)のような事情をもって,遺言の意思解釈の根拠とすることは許されないといわなければならない。』

相続弁護士のコメント

本件で争点となったのは、「荒川区西尾久7丁目60番4号」の不動産との文言が、建物のみを指すのか、それとも土地建物を指すのかという点でした。

本判決は、最初に、遺言書には土地又は建物ではなく、「不動産」と記載されている点を指摘しています。「不動産」という用語は土地と建物両方を含むため、この文言が土地建物の両方を指すと解釈することは文理解釈上、可能ということを確認する趣旨と思われます。

次に、本判決は「荒川区西尾久7丁目60番4号」との住居表示が、土地及び建物の所在・地番・家屋番号のいずれとも一致しないことを認定しています。仮に、これらのどれかと一致してしまうと、上記の文言は、記載が一致する不動産を処分した趣旨と解釈する余地があることが理由と思われます。

以上を踏まえて、本判決は、上記文言は土地建物を指すと解釈しています。本判決は、受遺者が経営する会社の事業所が本件建物にあること、同社の融資を担保するため、本件土地建物に抵当権が設定されたいたことを認定しており、本件土地建物を受遺者に取得させる必要性を踏まえ、遺言の文言解釈として「荒川区西尾久7丁目60番4号」との住居表示が本件土地建物を指すと解釈することが許容されるかを検証したものと解されます。

更に、本判決は、遺言者の真意を探求するための事情の優先順位について言及している点も注目に値します。すなわち、本判決は『遺言書の記載自体から遺言者の意思が合理的に解釈し得る本件においては,遺言書に表われていない前記1(5)のような事情をもって,遺言の意思解釈の根拠とすることは許されないといわなければならない。』と判示しており、遺言書外の事情よりも、遺言書そのものに記載された事情を重視すべき点を指摘しています。遺言の解釈においては、多種多様な事情が主張される傾向にありますが、遺言書に記載された事情を重視すべきことは、遺言の解釈が争われた場合だけでなく、遺言作成時も念頭に置く必要があると思われます。

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