共同相続人(共有持分権者)に対する明渡請求

共有不動産を一人で占有うしている場合、他の共有者である共同相続人からの明渡請求を拒めますか

私は、相続財産である被相続人の自宅(土地建物)に居住しています。3年前までは被相続人と同居していましたが、その後、被相続人は自宅を出て、私に自宅を退去するように申し入れ、その後、建物明け渡し請求訴訟を起こされました。この裁判の途中に被相続人は亡くなり、私以外の相続人が裁判を承継しました。私は、建物から退去しなくてはならないでしょうか?なお、私の共有持分の割合は過半数に満たない状況です。

原則として、明渡請求を拒むことはできますが、共有持分を超えた使用については賃料相当損害金が発生します

法律上、建物の明渡しを拒むことはできます。しかし、共有持分権の範囲を超えた使用収益については、賃料相当損害金を他の相続人に支払う必要があります。

共有持分権者は、共有物全部についてその持分に応じた使用収益をすることができるとされています(民法249条)。したがって、共有持分割合が過半数に満たないからといって、過半数以上を占める共有持分権者からの明渡請求に直ちに応じなければいけないというわけではありません。

しかしながら、共有物全部に関する使用収益は、「共有持分に応じて」おこなう必要があるので、この範囲を超えた使用収益は、他の相続人との関係で正当化することはできません。したがって、この超過した使用収益に関し、共有物を使用収益している相続人は、他の相続人に対し、不当利得返還義務ないし損害賠償義務を負うことになります。

参考裁判例 

最判昭和41年5月19日 民集20巻5号847頁

思うに、共同相続に基づく共有者の一人であつて、その持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者(以下単に少数持分権者という)は、他の共有者の協議を経ないで当然に共有物(本件建物)を単独で占有する権原を有するものでないことは、原判決の説示するとおりであるが、他方、他のすべての相続人らがその共有持分を合計すると、その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといつて(以下このような共有持分権者を多数持分権者という)、共有物を現に占有する前記少数持分権者に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない。けだし、このような場合、右の少数持分権者は自己の持分によつて、共有物を使用収益する権原を有し、これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。従つて、この場合、多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである。
 しかるに、今本件についてみるに、原審の認定したところによればDの死亡により被上告人らおよび上告人にて共同相続し、本件建物について、被上告人Bが三分の一、その余の被上告人七名および上告人が各一二分の一ずつの持分を有し、上告人は現に右建物に居住してこれを占有しているというのであるが、多数持分権者である被上告人らが上告人に対してその占有する右建物の明渡を求める理由については、被上告人らにおいて何等の主張ならびに立証をなさないから、被上告人らのこの点の請求は失当というべく、従つて、この点の論旨は理由があるものといわなければならない。

最判平成12年4月7日

原審は、Eが昭和四二年五月二二日に死亡したこと、Eには妻F並びにD、被上告人B1及び同B2の三人の子があったこと、Dが同五九年一二月四日に、Fが平成四年五月二四日に、それぞれ死亡したこと、Eが昭和二九年ないし三〇年に本件建物一及び本件建物二を建築してこれらを取得した上、同四二年四月ころにFにこれらを贈与し、同五三年四月一〇日にFから被控訴人B2に本件建物一が同B1に本件建物二が各贈与されたことを併せて認定している。以上の事実によれば、特段の事情のない限り、Eの死亡に伴い、法定相続人の一人であるDが本件各土地の九分の二の持分を相続により取得したはずのものである。そうすると、上告人がDの右持分を相続により取得したというのであれば、上告人は、同様にE及びFの死亡に伴い本件各土地の持分を相続により取得した共有者である被上告人B1及び同B2に対して本件各土地の地上建物の収去及び本件各土地の明渡しを当然には請求することができず(最高裁昭和三八年(オ)第一〇二一号同四一年五月一九日第一小法廷判決・民集二〇巻五号九四七頁参照)、同B1に本件各土地の登記済権利証の引渡しを請求することや同B2の所有する本件建物一に居住している同B3に対して退去を請求することもできないものというべきである。しかし、【要旨第一】同B1及び同B2が共有物である本件各土地の各一部を単独で占有することができる権原につき特段の主張、立証のない本件においては、上告人は、右占有により上告人の持分に応じた使用が妨げられているとして、右両名に対して、持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することはできるものと解すべきである。

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