持ち回りによる遺産分割協議の可否
遺産分割協議は共同相続人全員が一同に会して行わないといけませんか
昨年父がなくなり、子供5人が相続人になりました。長男の私が兄弟間の調整をし、おおむね話がまとまるところに漕ぎ着けました。しかし、兄弟は多忙なため、実家に集まって遺産分割協議書を作成することがなかなかできません。このような場合に持ち回りで順次遺産分割協議書に署名押印をしてもらうという方法で問題ないでしょうか?
遺産分割協議は持ち回りで行うことも可能です
遺産分割の内容が確定していて、その内容が各相続人に示されていれば、持ち回りでなされた遺産分割協議も有効です。ご質問の場合、遺産分割協議書を持ち回りで署名押印するということですので、各相続人に遺産分割の内容が明確に示されていると言えますので問題ありません。なお、相続人が多数の場合、連名の遺産分割協議書を持ち回りで作成するとかなり時間がかかってしまいます。そこで、時間短縮のため、各相続人ごとに遺産分割協議書を作成し、それに署名押印する方法をとることもあります。この場合、当たり前ですが、全相続人に同じ内容の遺産分割協議書を送付する必要があります。
参考裁判例等 仙台高判平成4年4月20日
ところで、相続人間において遺産分割協議が成立するためには、相続人全員の合意が要件であり、この合意が成立するためには必ずしも全員が一堂に会することは必要ではないが、全員が一堂に会せずに持ち回りで分割協議をなす場合は分割の内容が確定しておりそのことが各相続人に提示されることが必要であると解するのが相当である。これを本件についてみれば、石蔵の相続人である上告人、被上告人ら及びハギの間で、石蔵の遺産である本件土地についての本件合意が成立したことは認められるが、他の相続人が本件合意の内容を了解したうえこれを承諾する意思表示をするのでなければ本件合意と同一内容の遺産分割協議が成立したということはできないはずである。しかるに、原審は右他の相続人に対して本件合意の内容が提示されたことを認定することなく、右認定の事実から、遅くとも昭和五八年一二月一二日までに石蔵の相続人間に遺産分割協議が成立したとしたものであり、この点に関する原審の判断は民法九〇七条一項の解釈適用を誤り、理由不備の違法があるものといわざるを得ず、その違法は結論に影響することが明らかであるから、論旨は理由がある。