遺産分割の方法-現物分割・代償分割・換価分割・共有分割-
遺産分割にはどのような方法がありますか
昨年、父が亡くなり、法定相続人である兄弟4人で遺産分割協議をする予定です。長男である私が遺産分割の案を作成することになっているのですが、遺産分割にはどのような方法があるのでしょうか。
遺産分割には現物分割、代償分割、換価分割、共有分割という方法があります
現物分割
現物分割とは、遺産を構成する個々の財産の形状や性質を変更することなく分割する方法です。遺産分割は、現に存在する遺産を相続人が分割する手続ですので、現物分割は最も素朴な方法であり、遺産分割の原則的方法とされています。
現物分割は、現存する遺産を取得する方法ですので、相続人にとってもわかり易い分割方法だといえます。もっとも、不動産の評価額について意見が合わない場合、遺産に含まれる土地の面積が大きいため分筆した上で現物分割をする場合などは共同相続人間の意見調整や手続が複雑になることがあります。
代償分割
代償分割とは、共同相続人の一部の者に法定相続分を超える遺産を取得させた上で、当該相続人に他の相続人に対する債務を負担させる方法です。
遺産に含まれる特定の財産の価値が大きすぎて現物分割が困難な場合や特定の相続人が遺産の大半を取得する場合などに代償分割が利用されています。
代償分割に関しては、家事事件手続法195条が「特別な事由があると認められるとき」との要件が必要とされていますが、これは審判手続により裁判所が判断を示す際の規定ですので、調停や裁判外の協議の場合、共同相続人が同意すれば上記の規定にかかわらず代償分割を行うことが可能です。
換価分割
換価分割とは、遺産を売却などにより換価処分し、これにより得た価格を共同相続人に分配する方法です。
現物分割が難しいものの、代償分割もできない場合に換価分割が行われるという傾向があります。
実際の事案では、実家の土地建物について相続が発生したものの、共同相続人のだれも取得や利用を希望しないことから、売却して代金を分割するということが増えています。
共有分割
共有分割とは、遺産について、具体的相続分による共有とする方法です。共有分割がなされた場合、共有関係の解消は共有物分割の手続によることになります。
遺産分割は、相続によって生じた財産の共有・準共有状態を解消し、各相続人が単独で権利行使可能な状態に還元することを目的とする手続ですので、審判手続により遺産分割の判断がされる場合、共有分割は、他の分割方法が採りえない場合の次善の策とされています。
共有分割は、共有状態が継続するということですので遺産分割の機能としては余り効果的ではありません。実際の事案では、とりあえず遺産分割協議を実質的に先送りすることを意図して共有分割がなされることがあります。
遺産分割方法の選択の基準
遺産分割方法の選択基準は、遺産分割の方法を共同相続人が協議で決める場合(調停を含む)と裁判所が判断する審判の場合で異なります。
共同相続人が協議により分割方法を決める場合は、現物分割・代償分割、換価分割、共有分割のどの方法でも自由に採用することができます。当事者が希望するのであれば、それをあえて妨げる理由がないからです。
他方、審判手続により裁判所が遺産分割の方法を決定する場合は、原則、現物分割→代償分割→換価分割→共有分割の順で遺産分割方法を検討しています。したがって、遺産分割の方法について協議する際は、最終的に審判でどのような分割方法が採用されるかを想定することが重要になります。