遺産分割方法の指定
遺産分割の方法について、被相続人の意思を反映させる方法はありますか
私は、会社を経営しており、相応の財産を築きました。私の財産が相続される場合の分け方について、私の意思を明確にしておきたいと思いますが、どのような方法がありますか。
遺産分割方法の指定という方法があります
遺産分割方法の指定とは、本来的な形態としては、遺言により法定相続分の範囲内で相続財産の配分方法を指定することをいいます。
具体的な遺産分割方法の指定としては、①現物分割、代償分割、換価分割などの遺産分割に関する基本方針(手段)を指示するもの(手段指定型)、②特定の遺産を特定の者が取得するように指示するもの(帰属指定型)、③債権等を取り立てて換価し、それを分割するように指示するもの(清算型)があるとされています。
上記のうち、①手段指定型は、遺産分割方法の指定という制度が当初想定していた方法ですが、手段指定型の遺産分割方法の指定は、遺産分割協議や審判の準則として機能するにとどまり、遺産分割が不要になるわけではありませんので、効果がやや中途半端な面があり、あまり利用されていません。また、③の清算型は、利用する場面が限定されており、あまり利用されていません。
他方、上記②帰属指定型は遺産分割方法の指定で最も多く利用されている類型と言えます。帰属指定型のように特定の財産を特定の者に取得させると遺言している場合においても、従来は当該分割方法の指定は遺産分割協議・審判の準則として機能するにとどまり、遺産分割方法の指定の対象となった財産が相続開始後当然に分割されるとの権利移転効はないとされていました。
しかし、最高裁がいわゆる「相続させる遺言」に関して判例法理を形成するなかで、「相続させる遺言」を相続分の指定を伴う遺産分割方法の指定と解し、この場合、対象となった遺産は、遺産分割を経ずに当然に権利が移転すると判示するに至りました。これにより、帰属指定型の遺産分割方法の指定については、遺産分割が不要であるとされ、「相続させる遺言」を推奨する公証実務において一般的に利用されています。
したがって、ご質問の事案においても、帰属指定型の遺産分割方法の指定(具体的には「相続させる遺言」を作成する)を行うことにより、ご自身の意思を明確にしておくことをお勧めします。